ほそぼそと生活する

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【映画感想】博士と彼女のセオリー

ネタバレを含みますのでご注意ください。


今日もアマゾンプライムでおススメに出てきた映画を
何と無しに観てみたら、とても良かったので感想をば。


あらすじ

類まれなる頭脳を持つスティーブンは
大学院在学中にジェーンという女性と出会い、二人は恋に落ちる。
そんな時、スティーブンがALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断され、
余命2年と宣告されてしまう。
思考や頭脳は衰えないと知らされたスティーブンは、
命ある限り研究に専念することを決意し、ジェーンもまた、
覚悟を決めてスティーブンを支える道を歩むのであった。


この話は実話に基づいたストーリーである。
彼の才能を世に広めるためには、彼の頭脳だけでは足りない。
歩けなくなり、言葉を発することもままならなくなった彼を
誰よりも理解しようとしたのは、妻ジェーンの存在だったように思う。


夫婦の形

当初、あらすじもあまり観ずに、
またスティーブン・ホーキング博士の事もほとんど知識として無かった私は
よくある”恋愛映画”かな、という程度にしか思っていなかった。


この映画を観ていて思い浮かんだのは、『ビューティフル・マインド』。
かの映画もとても印象深く私の思い出に残っていて、
夫婦での葛藤や苦難というのは計り知れないものがあると感じさせられる。



ただ、この映画でいう夫婦の形はまた少し変わっている。
しかしそれが必然だったのではないかと共感させられる部分が多い。


長年にわたり連れ添う夫婦との間に、夫を介護し続けるジェーンの心の中に、
限界や疲労が出てくるのは当然であった。
歩けない、一人では食事がとれない夫スティーブン。
それに加えてまだまだ育ちざかりの子供たち。


そんな中、ジェーンが出会った一人の男性ジョナサン。
彼は妻を一年前に亡くしており、傷心していた。
そんな感情をスティーブンに漏らす。
スティーブンはどう思っただろう。
自分がもし死んだら?彼女は十年以上支え続けてくれている。
けれどもそんな彼女も辛そうで、限界もわかっている。
自分ももちろん、彼女にも助けが必要だった。


子供たちもジョナサンにはよく懐いた。
ジョナサンもまた、懸命にスティーブンを支えてくれている。
ジョナサンの存在が、スティーブンにとってもジェーンにとっても
必要であると、誰よりも夫婦が理解していたように思う。


以下引用

ジェームズ・マーシュ監督は言う。「3人の大人たちの間に醸し出される美しいハーモニーを表現したかったんだ。ジェーンとジョナサンは、2人に共通する“渇き”から、どうしようもなく恋に落ちてしまい、それはスティーヴンも認めざるをえないものだったんだよ」。


ホーキング夫妻を支えた…常識を超える“三角関係”の秘密『博士と彼女のセオリー』 | cinemacafe.net


映画の中でも、その表現は確かに響いた。
単純な浮ついた感情という言葉にするには事情が複雑だと思う。


愛の表現

昨今、日本では特に介護うつなどが問題として取り上げられることが多いが、
作中のジェーンの献身ぶりは脱帽ものであった。
何より、彼の才能を病気で閉じ込められないように懸命に努めていたことは、
世間からの彼の評価にもつながったのではないかと思う。
作中ではそう感じました。
声が発せなくなっても、彼の言葉を表現する方法を考え、
彼の気持ちを誰よりくみ取ろうとしていた。


動けなくなった彼との間にできた子供はジョナサンの子ではないか、
そう噂されるのも傍から見れば無理はないかもしれない。
でも誰もが思っているよりも、ジェーンはスティーブンのことを愛していて
それが病気によって変わるものではないことをジェーンが何より理解していた。


ジョナサンへの好意が確かにあると言っていたジェーンの感情は、
先述の通り、この夫婦の環境下で”どうしようもなく恋に落ちた”というのは
何も有り得ない話ではないように思う。


その後のジェーンも、ジョナサンもまた
スティーブンのことを大事に思っていて、気に掛ける様子が伺える。
スティーブンもまた、
ジェーンのこと、そして彼女との間の結晶である子供たちのことも
とても誇りに思っているように感じた。
少し独特な関係性ではあるけれども、彼らにはそれぞれへの愛があったように思う。


おわりに

非常に長くなってしまいましたが、
この映画の良かったところは、ストーリーだけではなく、
役者の表現の上手さにもある。
スティーブン役のエディ・レッドメインの病状の表現は言うまでもなく、
微妙な感情の揺れもその限られた表現方法の中で見せてくれたのは凄かった。
ジェーン役のフェリシティ・ジョーンズと、
ジョナサン役のチャーリー・コックスも、惹かれゆく様と思いやりから出る葛藤を
丁寧に且つ理解し易く魅せてくれていたように感じました。


それから、作中の音声合成器を私はよく知らなかったのですが、
技術と発展というのは本当に凄いなと…
諦めなければ何でも出来る、というわけではないが、
人が限界を決めることは出来ないなという風には感じました。


とても良かったので、皆様もぜひ。